KEN’S CAT LOG
▣

AI動画ドラマ最前線:中国を中心に、いま知っておきたい注目作10選

AI動画ドラマ最前線:中国を中心に、いま知っておきたい注目作10選

生成AIで作る動画は、短いデモ映像の段階から「連続ドラマ」の段階へ進み始めた。なかでも動きが速いのが、中国の縦型ショートドラマや数分単位の「微短劇(マイクロドラマ)」だ。神話、歴史、SF、家族ドラマまで題材は広がり、国営メディアや大手動画プラットフォームも実験作を次々と公開している。

ここでは、2024年以降に発表された作品を中心に、AI動画ドラマの現在地が分かる10作品を紹介する。なお「AIドラマ」と呼ばれる作品でも、全映像を生成AIで作ったもの、人間の俳優とAI映像を組み合わせたもの、脚本や美術など一部工程にAIを使ったものがある。本記事では、その違いもできるだけ明記した。

1. 『中国神話(Chinese Mythology/中国神话)』— 中国初の“AI全工程”マイクロドラマ

中国中央電視台(CCTV)系と清華大学の研究チームが共同制作し、2024年3月に公開した全6話のシリーズ。中国神話を題材に、過去・現在・未来をつなぐ映像世界を描く。

『中国神話』「嫦娥奔月」の公式紹介画面

『中国神話』「嫦娥奔月」。画像:Yicai Global/CMG公式紹介より。

特筆すべきは、美術、絵コンテ、映像、音声、音楽まで、制作のほぼ全工程でAIを用いた点だ。中国初の「AIによる一気通貫型マイクロドラマ」として報じられ、従来手法に比べ制作費を大幅に抑えたとされる。現在の中国AIドラマブームの出発点として、まず押さえておきたい作品だ。

2. 『三星堆:未来啓示録(Sanxingdui: Future Apocalypse)』— 古代文明とSFを融合

Douyin(中国版TikTok)と映画会社Bona Film Groupが2024年7月に発表した、全13話・各3〜4分のシリーズ。謎の多い三星堆遺跡と未来的なSF世界を組み合わせた企画で、博物館の文化財展でも披露された。

DouyinとKuaishouが公開した中国AIミニドラマの幻想的な鳳凰

Douyin/KuaishouのAIミニドラマを紹介する公式スチル。画像:Yicai Globalより。

制作にはByteDance傘下のAIクリエイティブ基盤「Dreamina(即梦)」が使われ、カメラの水平・垂直移動など、動画生成における演出制御を強化。文化遺産を“解説する”のではなく、“物語として体験させる”方向へAI映像を活用した代表例だ。

3. 『山海奇鏡之劈波斬浪(Strange Mirror of Mountains and Seas: Travel Through Waves)』— 750万再生を記録した神話アクション

Kuaishou(快手)が2024年7月に公開した全5話のAIマイクロドラマ。中国最古級の地理・神話書『山海経』をもとに、幻想的な生物と冒険世界を描く。

公開直後に約750万再生を記録したと報じられ、AI動画が技術デモではなく、視聴数を競う娯楽コンテンツになったことを示した。脚本の初稿や最終編集は人間が担当し、AIは撮影、美術、衣装、照明などの工程を効率化。制作費は従来型の4分の1未満だったという。

4. 『英雄』— 普通の男が霍去病と時空を超えて共闘

CCTVが2024年6月に公開したAI短編ドラマ。現代の普通の男性が時空を超え、前漢の名将・霍去病とともに戦う成長物語だ。

歴史人物の造形や感情表現、壮大な戦場・幻想空間にAIを活用している。実在した英雄を、俳優の再現だけに頼らず新しい映像キャラクターとして描く試みであり、歴史ドラマとAIの相性を探る作品として興味深い。

5. 『愛は永遠に終わらない(爱永无终止)』— AIと実写俳優を組み合わせた家族ドラマ

同じくCCTVが2024年6月に公開した、AIと実写を組み合わせる方式のマイクロドラマ。若者がAIで亡き父の姿を再現し、祖母の心を慰めようとする三世代の家族物語である。

俳優の演技を中心に置きながら、イメージ映像や幻想場面をAIで生成した点が特徴だ。全面的に人物を生成するのではなく、人間の演技を補う“ハイブリッド制作”が今後の現実的な選択肢になり得ることを示している。一方で、故人の再現というテーマは、同意や肖像、記憶の扱いについても考えさせる。

6. 『奇幻専門店(奇幻专卖店)』— 全編AI生成の未来ペットSF

CCTVが『英雄』『愛は永遠に終わらない』と同時公開したSFマイクロドラマ。AIが生み出した未来の人物や不思議な動物たちを通じ、「探すこと/探されること」「愛すること/愛されること」を描く。

全編をAIで生成し、現実には存在しないペットや未来都市を映像化。生成AIが得意とする“撮影不可能な存在”を物語の中心に据えた作品で、AI映像の長所を分かりやすく体感できる。

7. 『Beyond the Fables』— 中国神話の登場人物が現代へ

国際放送CGTNが2024年12月に公開した全3話のAIマイクロドラマシリーズ。『西遊記』の白龍馬など、中国神話の存在を現代へ呼び戻し、高速鉄道、宇宙開発、グリーンエネルギーという3つのテーマを描く。

『Beyond the Fables』公式メインビジュアル

『Beyond the Fables』公式メインビジュアル。画像:CGTN公式発表より。

脚本、映像、音声、音楽まで幅広い工程にAIを導入。神話を未来技術の紹介へ接続する構成で、中国文化を海外へ発信する“デジタル文化外交”の側面も持つ。映像シリーズに加え、デジタル絵本や音楽アルバムも展開された。

『Beyond the Fables』全3話の公式ビジュアル

交通、宇宙、グリーンエネルギーを描く全3話。画像:CGTN公式発表より。

8. 『求真(Seeking the Truth)』— 科学とフェイク対策を描く公共マイクロドラマ

上海メディアグループ(SMG)が2024年に制作した公益型AIGCマイクロドラマシリーズ。宇宙やミクロの自然世界をAI映像で表現しながら、ネット詐欺、デマ、誤情報の危険性を伝える。

KnewsやBesTVで配信され、テレビ放送も予定された。恋愛や復讐が多い短編ドラマ市場で、科学リテラシーや公共啓発にAI映像を使った点がユニークだ。AIがフェイクを作るだけでなく、フェイクへの警戒を促す教材にもなり得るという、少し逆説的な事例でもある。

9. 『Kiss Lighting — Ghost Cupid』— 韓国放送局発のAIロマンス

中国以外では、韓国SBS Medianetの『Kiss Lighting — Ghost Cupid』が注目例だ。2024年12月に放送されたロマンス作品で、恋を助ける幽霊ウヨンを主人公にする。

韓国AIドラマ『Kiss Lighting — Ghost Cupid』第1話の画面

『Kiss Lighting — Ghost Cupid』第1話の紹介画面。画像:The Korea Times/SBS Medianet公式YouTubeより。

監督が作った大枠をChatGPTで膨らませ、会議を経て脚本家が完成稿に仕上げたほか、HeyGen、ElevenLabs、Midjourneyなどを映像や音声、イメージ制作に利用した。人間の企画・判断と複数の生成AIを組み合わせる“AI制作パイプライン”が、既存のテレビ局へ入り始めたことを示す作品だ。

10. 『Exit Valley』— 視聴者が続きを作る米国発の参加型AIアニメ

米Fable Studioの生成AIプラットフォーム「Showrunner」から生まれた風刺アニメ。架空の街“Sim Francisco”を舞台に、シリコンバレーのAI業界や著名テック経営者を題材にする。

最大の特徴は、視聴者が文章で指示を入力し、新しい場面やエピソードを作れること。完成済みの番組を受け身で見るだけでなく、視聴者が物語に参加し、分岐や派生回を作る“プレイ可能なテレビ”を目指している。Amazon Alexa Fundの出資も報じられ、AIドラマが制作技術だけでなく、視聴体験やIPのあり方まで変える例として話題になった。

AIドラマは「低コスト映像」から「新しいフォーマット」へ

10作品を並べると、現在のAIドラマには大きく3つの方向が見える。

  • 全編生成型:人物、背景、音声、音楽までAIで構築する
  • ハイブリッド型:俳優の演技や人間の脚本を中心に、AI映像を組み合わせる
  • 参加型:視聴者自身が物語の続きを生成し、作品世界を拡張する

中国でAIマイクロドラマが先行した背景には、数分単位の短い物語、縦型動画プラットフォームの巨大な視聴者層、神話・歴史という豊富な題材がある。短尺なら、生成映像で課題になりやすい人物や背景の一貫性も比較的管理しやすい。

一方で、技術が進むほど、俳優の顔や声の無断利用、学習データの著作権、AI生成であることの表示、クリエイターの雇用と報酬といった問題は重くなる。中国でも俳優団体が無断利用に懸念を表明しており、面白さや低コストだけでは語れない段階に入っている。

AIドラマの本当の勝負は、映像が“それらしく”作れるかではなく、視聴者が次の話を見たくなる人物と物語を生み出せるかだろう。2024年から2025年は実験作が一気に増えた時期だった。次に注目すべきは、短い話題作から、長く愛されるシリーズが生まれるかどうかである。

参考資料

情報は2026年9月24日時点。作品名の日本語表記には、本記事による仮訳を含みます。